強引社長といきなり政略結婚!?

人感センサーなのか、フットライトがぼんやり灯る。


「朝比奈さん、ここ――」


パンプスを脱いだ途端、振り返った彼に抱きすくめられた。

そうされる喜びを疑念が邪魔する。
ほしいのは私じゃなく、父の会社なのに。おじい様に認めてもらうためにほしいのなら、おじい様が必要ないと言えば、それでおしまい。婚約者として別の女性を朝比奈さんに考えているのなら、私は本当にいらなくなる。
体をよじって、彼から逃れようとした。


「……朝比奈さん、やめてください」


腕を突っ張って朝比奈さんの胸を押す。


「どうして!」


眉根を寄せた朝比奈さんが声を荒げた。


「こんなこと、やめたほうがいいです」

「こんなことってなに」


私の肩を掴み、朝比奈さんが鋭く見下ろす。

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