強引社長といきなり政略結婚!?
素直になった夜
しばらくすると、見たことのある景色の中を走っていた。人工的な光が一気に減り、目に見える範囲に山の黒い影が見える。
ここは……。
「この前、連れて来てくれた乗馬クラブですか?」
沈黙を破り、つい聞いてしまった。
「その近く」
馬のところへ行くわけじゃないみたいだ。
ほどなくして車は、丸太をそのままの状態で組み込んだようなログハウスの前で停まった。車のライトが消されると、一気にあたりが暗闇に包まれる。街中とは違い街灯が少ないせいではっきりとは見えないけれど、かなり大きなログハウスに見える。
運転席から回り込んだ朝比奈さんが、助手席のドアを開けた。
「降りて」
膝の上に置いていた手を彼が取る。
そのまま引き上げられるようにして、車から降り立った。
朝比奈さんは無言で私の手を引いたまま、ログハウスのドアを開錠し中へと入った。