強引社長といきなり政略結婚!?
「ごめんなさい」
誤りながらも、悪いのは浩輔くんだとばかりに彼を横目で睨む。
『木陰に問い合わせたら自転車が置き去りだって言うじゃありませんか。それなら朝比奈様とご一緒かと、旦那様から朝比奈様へお電話を入れていただきましたのに、ご一緒じゃないとおっしゃるものですから』
「一成さんに電話したの!?」
つい大きな声になる。
彼からあった三件の着信は、多恵さんから事態を聞いたがためのものだったのだ。
『他にあてがなかったものですから。それで、今どちらなんですか? 私がお迎えにあがります』
「すぐ近くにいるから心配しないで。もうすぐ帰るから」
そう言うよりほかない。浩輔くんと一緒だということがばれたら、それこそ大変なことになる。ほうきを持って闇雲に雨の中を走りだすかもしれない。
『ですが――』
「本当にすぐ帰るから。じゃ、切るからね」