強引社長といきなり政略結婚!?
「警察に通報?」
「そうなの。異常なほどの心配性だから」
「……わかる気がするよ」
多恵さんにほうきを振りかざされたことを思い出したのか、浩輔くんは納得して私のバッグを返してくれた。
慌ててスマホを取り出したところで、ちょうど着信が切れる。着信履歴を見てみると、多恵さんだけで七件、一成さんからも三件入っていた。
多恵さんに折り返すと、呼び出し音が一回と鳴らずに彼女が出た。
『汐里様!? 今どちらですか!?』
慌てふためいている様子が手に取るようにわかる。
「あ、うん、ちょっとね……」
『ちょっとって、自転車にも乗らずにいったいどちらなんですか』
興奮気味な多恵さんの声を聞きながら、浩輔くんを見る。
彼にも多恵さんの声が漏れ聞こえているようで、薄っすらと笑みを浮かべていた。
『あまりにもお帰りが遅いからお電話申し上げたのに、お出にならないし』