強引社長といきなり政略結婚!?

「――は、はい!」

「そろそろお時間ですが、どうかされましたか!? 鍵がかかっているのですが、ご無事ですか!?」


一成さんとこっそり笑い合う。
多恵さんのことだ。私が倒れたか、暴漢にでも襲われたかと思ったのかもしれない。


「大丈夫よ。すぐに行きます」


ドアに向かって答えると、多恵さんが「では、ここでお待ちしておりますので」と言う。


「……えっと、ごめん、あと三分待ってもらってもいい?」

「やはりなにかアクシデントでもあったのではないですか!?」

「ち、違うの。本当に大丈夫だから」


ただ、一成さんともう少しだけキスしていたいだけ。
甘い時間をあと少しだけ。

私を膝に乗せたまま、一成さんは声を殺して笑っていた。


「承知いたしました。では、三分後にまた参ります」


多恵さんが立ち去った気配がして、そこで息を吐き出す。


「軽くするだけって言ってなかった?」


一成さんがいたずらな笑みを浮かべる。


「一成さんが悪いんですからね」


釘を刺すように言いながら、私たちは再び唇を重ね合せた。



―END―

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