強引社長といきなり政略結婚!?
番外編~ふたりきりを待ちわびて


婚約披露パーティーから半年後の十月。
結婚式を一週間後に控えた、ある土曜日のことだった。


「はい、社長も汐里さんもリラックスしてくださいねー。自然体でいきましょう。社長、眉間の皺を伸ばしてください」


パシャパシャというシャッター音が部屋に鳴り響く。
一成さんと私は、都内から車で二時間ほど行った先にある山のリゾートホテルの一室にいた。
そこはコンラッド開発が手掛けた場所で、雑誌や口コミサイトのアンケートでは「一度は泊まりたいホテル」のトップテンに常にランクインしている。
周囲を森に囲まれた山あいにオールスイートのヴィラが建ち並ぶ、とても静かなリゾートだ。

そんなところで私たちがいったいなにをしているのかと言うと、彼が代表を務めるコンラッド開発の社内報の取材だった。
なんでも従業員が結婚をすると、夫婦そろって紙面を飾る定番の記事があるらしい。それが社長ともなれば大々的になり、通常見開き二ページのところを四ページも割くという。

一成さんは断固として取材を拒否したそうだけど、日下部さんが勝手に了承してしまったとのこと。
一成さん曰く、日下部さんの陰謀だそうだ。

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