オフィスに彼氏が二人います⁉︎
本部での用を済ませた私は、なんだかフワフワとした夢心地で営業室に戻った。

すると、営業室内の書庫室に久我くんが入っていくのがちょうど見えた。扉横についている壁スイッチで電気を点けてから入っていったから、今書庫室にいるのは久我くん一人だろうとわかる。

私はダッと書庫室に駆け出し、バンッと扉を開け、久我くんが「うわっ、ビックリした」と振り向くのと同時に扉を閉めた。


「ちょ、七香?」

久我くんは完全に不審な目で私を見つめる。

そんな彼に、私は「誘われちゃった!」と声を荒げた。


「誘われた? 誰に、なにを?」

「しっ、審査部の時山部長に! 食事に!」

「はあ!?」

私の発言に久我くんも驚いたようで、私より大きな声を出す。彼はすぐに右手で口元を抑え、声を小さくする。


「マジかよ?」

「マジみたい。なんでだろ? 何着ていこう? 何話したらいい?」

「落ち着けって……」

久我くんは両腕を組み、うーんと考えこんでくれる。


「とりあえず、後でゆっくり話聞くよ。今日は営業課も定時には上がれると思うから、七時にいつもの居酒屋でどう?」

久我くんにそう言われ、私は「うん、わかった」と答えた。


そうして久我くんは、書庫室のキャビネットからファイルを数冊素早く抜き取ると営業室に戻っていった。私も早く自分の仕事に戻らなくちゃ。


……久我くんに甘えすぎるのは久我くんの彼女に悪い、とか思いながら、また久我くんに甘えることになってしまった。
久我くんは、やっぱり優しいなぁ。いつでも私の話を聞いてくれる。


そうだ。せっかくだし、この間久我くんが言いかけてた言葉の続きを聞くことにしようかな。そんなことを思いながら、私も窓口に戻った。
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