オフィスに彼氏が二人います⁉︎
言葉を考えるのに三日掛かった。
どんなに言葉を選んだところで、相手を傷付けない方法なんてない。
だけど、せめて自分の気持ちを真っすぐに相手に伝えられる言葉を考えたかった。それが、相手に対する誠意だと思ったから。



「うれしいな、嵩元さんの方から誘ってくれるなんて」


私は、仕事終わりに職場から少し離れたカフェに時山部長を呼び出していた。


テーブルを挟んだ目の前の席に座る時山部長は微笑みながらそう言った後、


「まあ、俺が期待しているような話じゃないってことは、君の表情を見ればわかるけどね」


今度は少し寂しげな顔をしてそう言った。



「……ごめんなさい」

本題に入る前に、まず謝罪を口にした私に、時山部長は口元だけ笑ってくれた。



「……きっとフラれるとは思ってた。自分の気持ちにセーブが効かず、感情のままに君に触れてしまった。こんな自分は、君の恋人でいる資格なんかないと」

「時山部長……」

「今更こんなこと言っても遅いのはわかってる。でも言わせてほしい。……この間は乱暴なことをして、本当にすまなかった」

そう言って頭を下げる時山部長に、私は「いえ……」と答える。


「確かに悲しかったですが、私がいつまでもハッキリしなかったのもいけなかったんです。だから……顔を上げてください」

すると時山部長はゆっくりと顔を上げ、私と視線を合わせた。まだどこか戸惑っているような表情で私を見つめる。
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