オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「気持ちが固まったの?」

彼の言葉に、私はコク、と頷き。


「……久我くんが好きです」

と答えた。


それに対して時山部長は、「そうか」と短く答えるのみで。



「……驚かないんですね」

「どうして?」

「その……」


時山部長は、〝久我くんには負けない〟と余裕がありそうだったし、先日私に無理やりキスしてきたのは時山部長だけじゃなく、久我くんもだ。だから、このタイミングで私が久我くんを選ぶことは、時山部長にとっては予想外と捉えられるかなと思ったんだけど……。


それをどう彼に伝えるべきか、頭の中で言葉を選んでいると。


「……言ったよね。ずっと見ていたから、君のことはよくわかっているつもりだよ」

ゆっくりとそう話し出す。
その表情は、意外にも少し優しげだ。


気持ちに応えられず申し訳なさを感じつつも、ここまで私のことを想ってくれていることに、改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。


けれど。


「じゃあ、久我くんと付き合うんだね?」

そう尋ねられ、私は首を横に振った。
それには、時山部長も驚いたようで、いつも表情を崩さない彼にしては珍しく、目を見開いて私を見つめた。


「どうして? 久我くんは君のことを好きで、君も久我くんのことが好きなのに、付き合わないの?」

時山部長の質問に、私は再び言葉を選びながら、ゆっくりと自分の気持ちなどを話していく。
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