先生、もっと抱きしめて
「ここにいたのか」

「あれ?だって先生今日も補習って言ったじゃん」

「昨日、数学準備室でやるかって言ったつもりだったんだけど。解いてる間仕事したいし」

「え、ゴメン。聞いてなかった」

はーあと脱力するマツタク。

……なんか、マツタクが走るのが意外。

走ったり、飛んだり、スポーツしないイメージだもん。
昨日は、先生にドキドキしてたから、ちゃんと話聞いてなかった……。

「じゃ、移動しよ」

そう促されて、私は荷物を纏める。
走ってきたマツタクは静かに黒縁メガネを取り、シャツを腕まくりした腕で、ぐっと汗をぬぐうしぐさを見せた。
そして、険しい顔でメガネを拭いている。

えっ。メガネ取ったら、なんか……。

「マツ……じゃなくて、先生、若い」

「……それ褒めてんのかなあ……」

マツタク、明らかに怪しんでる顔。
< 13 / 55 >

この作品をシェア

pagetop