狼社長の溺愛から逃げられません!
「ほんとうに鬼ですよね。この前、ネットニュースにのった社長のインタビュー記事の見出しを読んで吹き出しちゃいましたよ」
「へぇ、どんな記事?」
「ヒット作を連発する配給会社のイケメン社長は、まるで『映画の神様に愛された王子様』だって」
そう言うと、古賀さんがぶっと吹き出して笑った。
「映画の神様に愛された王子様って……」
「内面を知らないって怖いですよね」
確かにネットにユースに添えられた写真には、映画の神様だって余裕で虜にできそうなくらい魅力的な笑みを浮かべた社長の姿が映っていた。
だけど、いくら外見がイケメンだからって、あの社長を王子様だと思う人間はこの社内にはひとりもいないと思う。
「社長は『映画の神様に愛された王子様』ってより、『興行の悪魔に魂を売った帝王』って感じだよなぁ」
「ほんとそれです! 悪魔に魂を売ってますよね。ていうか悪魔そのものっていうか、むしろただの鬼っていうか……」
すごい勢いでうなずくと、古賀さんがくすくすと肩を揺らして笑う。