狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「有川さん戻りました!」

準備中のホールに入り鳥谷部さんがそう声を上げると、わっとみんなの注目がこちらに集まった。

「有川さん……!?」

一番入り口の近くにいた古賀さんが、私のことを見て絶句する。

「わー、美月ちゃん綺麗!」

固まった古賀さんの横をすり抜け駆け寄ってきた華絵さんが、そう言って顔を輝かせた。

「あ、いや、でも……。せっかくこんなに綺麗にしてもらっても、やっぱり私ひとりでお客さんの前で踊るなんて……」

笑われるに決まってる。場がしらけてお客さんたちをがっかりさせてしまったらどうしよう。

私が涙目でそう言うと、こつりと靴音が近づいてきた。

顔を上げると、社長がこちらに歩いてくるのが見えた。

社長もいつの間にか服を着替えていた。
いつもはグレーやネイビーのスーツを着ることの多い社長が、今は光沢のあるブラックスーツを身につけていた。

スタイルのいい体にぴったり合うように仕立てられた張りのあるスーツ。ワインレッドのアスコットタイに同じ色のポケットチーフ。
ドレッシーな装いの社長は、いつもよりもさらに大人の色気が増している気がする。


 
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