狼社長の溺愛から逃げられません!
 

誰もいない深夜のオフィスで、給湯室までの短い距離を『ルイーズ』になりきって踊りながら歩く。

ちょっと意地悪で、でも素敵なヒーロー。そんな彼にリードされて踊るヒロイン。
幸せでたまらないルイーズの気持ちになって、オフィスの狭い通路をクルクルと回っていると、誰かのデスクの足元に置かれたダンボールに足がひっかかった。

「わっ……!」

思い切りバランスを崩して床に尻もちをつく。驚いて目を見開くと、デスクの上に積み上げられた資料がバラバラと降ってきた。

「いった……ぁい!」

気がつけば、私はダンボールと資料に埋もれて天井をあおいでいた。
躓いた拍子にイヤホンのコードを抜けたスマホから、テンポのいい明るい音楽が誰もいない深夜のオフィスに流れていた。

「……もう、なにやってんだろ。私」

この状況が情けなさ過ぎて、逆に笑えてしまう。

毎日は楽しいことばかりじゃなくて、仕事で失敗すれば上司に怒鳴られるし、人と違った行動をすれば冷たい目で見られる。
それでもちょっぴりの幸せと明日への希望を胸に、めげずに頑張る等身大の女の子。

そんなルイーズの物語を、ひとりでも多くの人に興味を持ってもらえるように、頑張って宣伝しよう。
そう思いながら、物に埋もれたまま肩を揺らしてひとりで笑った。


 
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