狼社長の溺愛から逃げられません!
翌日。
高級感のあるイタリア製のキャメル色の牛革のソファーと、ダークブラウンの重厚なデスク。男前の社長にぴったりなモダンでシンプルなその空間に緊張しつつ、私はノートを胸に抱き、椅子に座るその人の前まで進んでいく。
「社長! できました、コピー百個。見てください!」
そう言ってノートを差し出した私に、社長はゆっくりと瞬きをした。
乗り込むようにやって来た社長室。
唇に挟んでいた煙草をゆっくりと手に持つと、ふーっと白い煙を吐き出す。
気怠げに首を傾げ、ノートから私の方へと視線を移す。
社長のその何気ない仕草が、やけに威圧感と色気を漂わせていて私は思わずごくりと息を飲んだ。
「手書きかよ」
「え?」
ぽつりと言われ、首を傾げる。
「上司に提出するんだから、見やすいようにパソコンでプリントアウトしてこいよ」
「はっ!」
もっともな指摘にハッとして自分の持ったノートを見下ろす。
書いては消しの繰り返しで、ごちゃごちゃと文字が散らばるノート。
百個考えた達成感でいっぱいで、他の人が見やすいようになんて思いもしなかった自分が恥ずかしくなる。