狼社長の溺愛から逃げられません!
「なにをわかったようなこと言ってんだよ。黒瀬に見捨てられたからって適当に俺を褒めて誤魔化そうとしてんの?」
イライラしたように言った小笠原さんに、首を横に振る。
「この批評を読んだ社長に『好きにさせればいい』って言われたときはショックだったんですけど、小笠原さんの今まで書いた文章を読んでわかりました。小笠原さんはこの批評を公開する気なんてないって。こんな無理やり粗を探して中傷するような批評を公開したら、小笠原さんの評論家としての名前に傷がつくだけだから」
私がそう言うと、小笠原さんは口をつぐんだ。
「社長は小笠原さんの映画に対する誠実な姿勢を信じてたんです。きっと、こんな原稿を雑誌に載せる気がないってわかってた。だからまったく取り合わなかったんです」
背筋をのばしてそう言った私に、小笠原さんは顔をしかめた。
「……そうだよ。最初からあんな原稿、公開するつもりなんてなかった」
ぽつりとそう言ってうつむく。
「ほんとあいつは、昔からなにからなにまで全部持ってて余裕でムカつく」
そう言いながら小笠原さんは椅子から立ち上がり、カウンターで区切られたキッチンへと歩いて行く。