狼社長の溺愛から逃げられません!
「きっと、お前に幻滅されたくなかったんだろ。あいつ、お前が自分に惚れてるって薄々勘付いてて、不倫なんてしてる自分を知られたくなくて俺に恋人のふりを頼んだんだと思うよ」
そう言った社長に、小笠原さんが顔を上げた。
「不倫……?」
「五年前、スキャンダルになった映画監督」
「あれ、お前がでっち上げた嘘じゃなかったのかよ」
「誰がそんなことするかよ。そんなことで映画がヒットしたって嬉しくない」
社長がそう言って顔をしかめる。
「じゃあなんで……?」
「あいつは元々裏方志向だったのに、あの監督に見出されて言われるがままに女優やって、疲れたんじゃないか? つねに人に注目されることにも、不倫にも。きっと、全て投げ出すきっかけがほしかったんだろ」
「だから、紗英が自分でスキャンダルを流した?」
「わざわざあの映画を見に行ったところを狙ってスクープされたのは、あいつなりの俺への詫びのつもりだったのかもな。長いこと恋人のふりをさせられてたから」
「そんな……」
小笠原さんは力なくつぶやいて、持っていたビールの缶を強く握った。