狼社長の溺愛から逃げられません!


ふたりの関係がぎくしゃくしはじめたのは、一年前の努の浮気がきっかけだった。

『たった一回だけだから、もう絶対浮気なんてしないから』
そう言っておでこが床につくくらい何度も頭をさげた努に、流されて許してしまった私。

でも、それから些細なすれ違いがあるたびに、もしかして浮気をしてるんじゃないかと不安でしかたがなかった。

もちろん最初に浮気をした努が悪いけど、許すことにしたのに浮気を疑ってしまう私も悪かった。
ふたりの間の雰囲気が悪くなって、思い通りにならないとすぐに苛立つようになった努と、努と一緒にいることに疲れて距離を置いてしまう私。

いつの間にかふたりの間の恋愛感情は、ゆっくりとでも確実に減り続けていたんだ。

「あー……、もう……っ!」

仕方がないと自分に言い聞かせても、寂しさや悲しさは和らがなくて、両手で顔を覆って小さくうなる。

すると、どこかから煙草の匂いがした。

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