狼社長の溺愛から逃げられません!
そして次々にヒットを飛ばし、小さな配給会社をたった数年で業績をのばし会社を大きくしたという、恐ろしいくらい仕事のできる人。
すごい人だと思う。そんな人の下で働けて幸運だと思う。社会人として尊敬もしてる。
だけど……。
「明日までにコピー百個って、ほんと鬼すぎ……っ」
私は『百』という数字の多さに絶望して、開いたノートの上につっぷしてうなる。
「美月ちゃん、しごかれてるね」
クスクスと笑われて顔を上げれば、先輩の内田華絵さんがいつの間にか私の隣にいた。
「華絵さぁん……」
ノートに顎をくっつけたまま顔をしかめて泣き顔を作ると、華絵さんは明るく笑いながら私の頭をぽんぽんとなでてくれた。
「私、コピー考える才能ないかもしれません」
優しい華絵さんに、思わず弱音を吐き出す。
頭を振り絞って考えたのに、社長に一瞬で却下されたコピー二十個。それを見下ろしてため息をつく。
「そんなことないよ。社長に直々にダメ出しされるなんて、期待されてるんだと思うよ。頑張って」
「期待、されてるんですか……?」
一瞬ぱぁっと明るい気持ちになって、でもすぐにさっきの社長の凍りつくような視線を思い出してふくらんだ胸がしぼむ。
あの社長が私に期待してるなんて、あるわけない。