狼社長の溺愛から逃げられません!
入社して三年。
今まではずっと先輩の仕事のアシスタントや雑用をして映画宣伝の勉強していた私に、はじめて担当をまかせてもらえた映画『ルイーズ』。
全編を通してパリの綺麗な街並みやおしゃれなファッションやインテリア、気だるくてキュートなフレンチ・ポップスが華を添えるかわいいフランス映画だ。
はじめて見たときから前向きなストーリーに一気に引き込まれてしまった大好きな映画だから、こうやって宣伝を任せてもらえてうれしい。
『ルイーズ』をひとりでも多くの人に見てもらえるように、頑張るんだ。
そう意気込んで宣伝用のコピーを考えるためひとりオフィスで残業をしていると、フロアのガラスのドアが開き、短髪の男の人が入ってきた。
私が顔をあげると、宣伝部の先輩の古賀さんが紙袋を持ちこちらに近づいてくるところだった。
「お疲れ様です。古賀さん忘れ物ですか?」
私がそう声をかけると、古賀さんは目を線のように細めて笑った。
人を癒やすような柔らかい笑顔にほっとする。
華絵さんがお姉さんなら古賀さんはお兄さん。ふたりはいつも下っ端の私に優しく接してくれる頼れる先輩だ。