好きな人が現れても……
梅酒はたった二杯しか飲まなかった筈なのに、足元がユラユラしてる。
無性に眠いな…と思うのは、きっと昨夜ほぼ一晩中起きてたからだ。


「大丈夫か。帰れるのか?そんな足取りで」


紺野君は店を出てからもずっと気にしてくる。
うん…と答えるけど、顔は上げれそうにもない。

アスファルトのちょっとした段差にも躓きそうになり、フラつく私の二の腕を彼が掴んだ。

大きな手の感触が課長と同じだと思い出して顔を見上げると、掴んでた手が離れ、そのまま肩を抱かれて顔が近付いた。

えっ…と思うと前髪が額に触れ、ドキン…と心音が大きく跳ね上げたと同時に柔らかいものが唇に乗った。



「……っ!」



ドン、と突き放した視界の先に彼がいて、驚きとショックとで体が震える。
見据えられた彼は表情を歪ませ、「酔い過ぎるからだろう」と開き直った。


「俺が横山のこと気になってるって言うのに目の前で酔うなよ。何もしない程、成人君主じゃねえんだからさ、俺は」


怒った様な言い方をした後で、「ごめん…」と気まずそうに謝る。

それには何も言い返せず、黙ったままで歩きだした。




< 130 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop