好きな人が現れても……
「葉月ならあのテーブルの人達でも大丈夫でしょう?」


知らない顔が多い訳でもない。
それに今なら少し飲み過ぎて気も大きくなってる。

軽い感じで「いいよ〜」と席を替わり、ビール瓶を携えて近付いた。



「皆さん、お疲れ様でーす」


間延びした調子で挨拶をすると、相川先輩が「葉月!」と呼んだ。


「お久しぶりでーす、相川さん」


販促部の主任をしてる相川さんは酒豪で、ちょっとやそっとじゃ潰れない。

隣においでと座らせ、空っぽになってたグラスにビールを注いでと差し出された。


懐かしい新人の頃の話をしてると、向かいの席では課長と営業部の部長が、顔を突き合わせて話し込んでる。

ガチャガチャと賑やかな店内の音に紛れ、何を喋ってるのは聞き取り難い。



(側に行って話したいのに……)


酒豪の相川さんは話し相手がいなくて退屈してたみたい。
機関銃のように矢継ぎ早に話すものだから、何処で話を切って逃げたらいいかも分からない。


そのうち、やっとトイレに行くと告げて席を立った。

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