好きな人が現れても……
『どうした?』


…と、聞いてきた。

その些細なギャップに驚きと同時にドキンとしてしまい、酔ってた勢いもあり大袈裟に、いいえっ!何でも!…と叫ぶように言って仰け反った。


そしたら急に頭がふわっとして、ぐらりと回転したように感じた。

軽い目眩のようなものを覚え、足元もフラついた。



『危ない!』


素早く課長が肩を支えてくれて、何とか倒れずには済んだんだけど、その肩に置かれた掌があったかいのと大きいので更に驚き、バカみたいに男性なんだ…と思い知った。


『飲み過ぎもいいところだぞ』


やっぱり少し呆れながら笑う顔を初めて見る気がして、きゅん…と胸の奥が狭まった。

すみません…と言いながら、捕まって歩けばいいと言う課長に甘え、コートの左袖をぎゅっと握って歩かせて貰った。



(課長が人のものでなければ……)


そんな風に思ってしまい、奥さんに対して何もしてないけど、ごめんなさい…と思った。

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