好きな人が現れても……
それから毎日、あのあったかくて大きな掌の存在が頭から離れなくなった。

最初はそこだけを見てれば幸せだったのが、体のいろんな場所を見つめてしまう癖がついて。

些細な癖とか仕草に気づくとキュンとして、嬉しくなったり、ほくそ笑むように変わった。


バレンタインデーには、義理チョコを手作りして持って行った。

受け取ってくれないかと思ってたけど、課長は『ありがとう』と言って受け取ってくれた。


嬉しくて嬉しくて舞い上がりそうで、この時ようやく自分が課長のことを好きなんだと気づいた。


気づくと課長のいろんなことに嫉妬を覚えるようになった。


最初のうちは笑って見過ごせてた身支度のことも、妻なんだからきちんと整えてあげればいいのに…と思ったり、次の日のスーツくらいちゃんと用意してあげてよ…と憤ったり。


機嫌良さそうなのをみると、自宅でいいことあったのかな…と寂しくなったり、やっぱり奥さんのことが好きなんだな…と切なくなったり……した。



年度の変わった四月からは、毎日お弁当も持参するようになって、それがまた可愛くて美味しそうで彩りもいいときてる。

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