あの空を越えて逢いにいく。
二人組が消えたあと






「ーーー‥」



杏南はうつむいたまま
深く長い息を吐いていた。





まるで、止まってしまった呼吸を
なんとか再び動き出させるような。




そんな杏南の姿が、自分と重なる。






俺も同じだから。


霊に絡め取られた時のあの得体の知れない、逃げ出せない恐怖。


呼吸すらうまく出来なくなってきて、誰でも良いから助けて欲しいのに、ただ動かず耐えるしかない苦しみ。




そんなものからようやく解放されるとき

俺も今の杏南と同じように
いつも息を吐いていた。





気付くと俺は
自然に杏南の背中に手を当てていた。




「ゆっくり息吸えよ」

「う、うん」

「慌てなくて大丈夫だから」





俺の言葉に、杏南は驚いてこっちを見る。



「お前、いっつもあんななの?」


「あ‥うん。私、要領よく話したり苦手だから‥‥相手をイラつかせちゃうみたいで」





俺はなぜだか
無性にコイツを抱きしめてやりたくなる。


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