渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
しかし、イナダール国に攻め入り知ったのは、船員が皆、処刑されたという事実だった。
ガイアスは悲しみに暮れる間も無く、イナダール国を制圧するよう命令を出し、ついにヘルダルフを追い詰める。
「ヘルダルフ・イナダール!!」
「貴様ぁ……ナディア国の国王、ガイアス・ナディアか!!」
燃え盛る城の王座に座り、ガイアスを睨みつけるのは、頬に傷のある年配の男だった。
剣を地面に突き立て、どっしりと抱えるヘルダルフに、ガイアスは剣を構えながら近づく。
「よくも、我が民の命を意味なく奪ってくれたな。その命、民の代えにもならんが、散らしてくれる!」
(絶対に……この男だけは許さない!)
ガイアスは怒りを闘志に変えて、ヘルダルフを見据えた。
「この国は、最強の国なのだ……誰にも負けぬ、この私が最強の王なのだ!!弱き者の命に目くじらを立てるなど……お前は王の器に相応しくない」
「馬鹿を言うな、国は民あってことの国だ」
(狂った王め……王の器でないのは、お前の方だ、ヘルダルフ)
ガイアスは剣先をヘルダルフに突きつけた。
それに合わせて、ヘルダルフも王座から立ち上がり、スッと剣を構える。
「雑談はここまでだ、ヘルダルフ」
「フンッ、遺言は聞いてやるぞ、ガイアス・ナディア」
「必要無い!!」
同時に地面を蹴り、金属がキィーンとぶつかり合う音が王間に響き渡る。
何度か剣を合わせると、ガイアスは確信したように剣を突き出した。