渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「…………」
その音に、カルデアは体を震わせる。
この足音の主が、敵か味方かはわからないが、カルデアは静かに、死を覚悟した。
瞼を閉じると、部屋の前でカツンッと足音が止まる。
ギィーッと、立て付けの悪い音を立てて、扉が開くと、私はゆっくりと、目を開いた。
「なんだここは、牢のようだが……」
部屋に入ってきたのは、褐色に焼けた肌と髪を持つ男で、南国の出身であることは一目見てわかった。
男は、目鼻立ちが美しく、酷く端正な顔立ちをしており、カルデアは一瞬目を奪われて固まる。
「なっ、お前は……」
視線を部屋の天井や壁に向けていた男が、ようやくカルデアの姿を捉えて、驚きの声を上げた。
その目は、こぼれ落ちそうなほど見開かれている。
「……あなたは、ナディア国の方……ですね」
南国の衣装だろうか、肩と腕が大きく出る半分しかない袖に、服の合わせ目が大きく開いて露出した胸元。
ゆったりと着る、着物のような衣装だ。
男は細身でありながら、服の合わせ目からのぞく筋肉を見れば、男が戦士だということがわかる。
カルデアは確信した、この男はナディア国の戦士だと。
「俺は、雪のように儚く、美しい女を見たのは初めてだ」
「え……?」
男は、どこか恍惚とした顔で呟いた。
カルデアは、自分の耳を疑いながら、男に首を傾げる。