渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「申し訳ありません、よく聞き取れ……」
「よし決めた、お前は俺の王妃にする」
「……はい?」
(この人は、急に何を言い出すのかしら。他にも聞きたいことがあるのに、全然話が噛み合っていないわ……)
カルデアは困惑気味に男を見つめると、男はなぜか楽しそうに、大股で目の前にやってくる。
近くにやってきて初めて、カルデアは男がかなりの長身だということに気がついた。
ベッドに腰掛けているからなのか、余計にそう感じた。
「俺は、ガイアス・ナディア。ナディア国の王にして、英雄王とも呼ばれている」
「なっ……あなたが、ナディアの国王……」
聞いたことがある。
海を越えた先に位置する、大国ナディアの国王は、抗争ばかりが頻発する大陸を二十五歳という若さで、わずか一年という短さで平定した英雄王。
「お前は、名は何という」
「私は……カルデア・アルナデール。この国、イナダールの王妃です」
(私が、この国の王妃だということを知らないのかしら?)
その事実に驚きつつ、カルデアは名乗った。
「なんだと、イナダールの気狂い王に妻がいたのか!?」
「ヘルダルフ様は、私の夫です」
(夫と呼んでいいのかしら……)
カルデアがそう思うのも、無理なかった。
ヘルダルフとの結婚で体を求められることも、心の繋がりを求められる事も無く、関係は冷えきっていたからだ。