渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~


「ガイアス……?」

「おお、よく似合っている」

「え……?」


満足そうに笑っているガイアスに、カルデアはハッとして自分の胸元を見る。

カルデアの白い肌の上に琥珀の雫のような宝石が輝いていた。

ガイアスが首の後ろに手を回したのは、このペンダントをカルデアにつけるためだったのだ。


「これ……」

「お前が攫われた時、露店に一人で入ったのは、これを買うためだった」

「私の……ためだったのね……」


(どうしよう、嬉しくて言葉が出ないわ……)

心の奥底から湧き上がる歓喜に、カルデアの目に涙がジワリと滲む。

その目元に触れながら、ガイアスは目を細めた。


「結婚して一ヶ月だ、何かお前に贈りたくてな。かくいうお前は、高価な贈り物が嫌いだろう?」


(そういえば、ナディア国に来たばかりの時、ガイアスは高価なドレスや宝石ばかりを毎日贈ってきたわね)


その頃を懐かしみながら、カルデアは口元に笑みを浮かべる。


「だから、お前と町に出た思い出として、値段も張らないそのペンダントならば、受け取ってくれると考えたんだが……貰ってくれるか?」


「ガイアス……」


(私はこの先、あなたにどれだけの愛を貰い続けるのかしら……。それを全て返すには、生きている時間だけでは足りないわね)


カルデアは贈られたペンダントに指で優しく触れて、頬に伝う涙もそのままに、ガイアスを見つめた。


< 176 / 205 >

この作品をシェア

pagetop