渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「もちろん、ウィッカーだけでは厳しいだろう。そのため、我が国の商業の一部を、アルナデール国に委託し、労働場所を与え、国力を上げる事を提案する」
ガイアスの提案に、「おぉ、それなら景気回復を図れるぞ」と大臣達からも感動するような感嘆の声が飛ぶ。
この場にいたアルナデール国の大臣達やアイルにも、遠くない未来に、豊かなアルナデール国が生まれる事を想像できた。
しかし、国王は「黙れ!」と突然声を荒らげると、ガイアスとカルデアを鋭い眼光で睨みつける。
「そのように面倒な事……絶対にしないぞ!」
「っ……そんな……」
(面倒な事……ですって?)
国王とは思えない発言をする父に、カルデアは今まで政治の道具として、何も意見せず受け入れてきた自分を愚かだと思った。
どんなに身を犠牲にしても、生み出されるのは国王の懐を温める金にしかならないのだ。
カルデアは意を決したように国王の前に立つと、大きく息を吸いこんで、吐き出すと同時に告げた。
「失礼ながら、父様は国王の器ではありません」
「な………!」
「政務が面倒であるなら、これからは我が弟、アイルにその座をお譲りくださいませ」
「お前……が、この私に意見した事など、一度も……っ」
そう、カルデアは今初めて国王に意見する。
この国で、王女という立場は余りにも権力が無く、嫁ぐ事でしか国の役には立てない風習があった。
だからこそカルデアは、その身を国の財産とし、嫁ぐ事をおかしいとは思わなかった。
けれど、王女だからと王家や大臣が腐っていくのを傍観しているだけでは駄目なのだと、カルデアは気づいた。
常に民のために行動を起こしてきたガイアスに、カルデアはそう教えられたのだ。