渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~



「あなたと初めてここに来た時の事を思い出していたの」

「あぁ、あの時か……俺、必死だっただろ」


(必死といえば、必死だったかもしれない。贈り物に随分、悩んでくれたみたいだから)

ガイアスもカルデアの後ろでクスクス笑いながら、馬の足を止めた。

目的地である、丘に着いたからだ。


「カルデア、捕まれ」

「えぇ、ありがとう」


カルデアは両手を広げるガイアスに手を伸ばし、抱き抱えられるようにして、馬を降りる。

風がフワリと、ビスカの甘い香りを運んできた。


「あの時みたいに、抱えて歩くか?」

「ふふっ、それもいいけれど、私はあなたとこうして、手を繋いで歩くのも好きなのよ」


カルデアは馬を降りた後に自然と繋いだ手を、少し揺すってみせる。

ガイアスはその手を強く、握り返した。


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