渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「カルデア……辛いだろうに」
船医が部屋を出ていくと、ガイアスは船医に言われた通りに、カルデアの布を替えてやる。
時々、苦しさのあまり涙を流すカルデアに、ガイアスの心臓は鷲掴みにされたように痛んだ。
「お前は本当に、雪のように崩れてしまいそうだ……」
首筋を伝う汗を布で拭いながら、ガイアスは呟く。
腕を見れば、白い肌が痛々しい程に赤くなっていた。
「そうだ、船医は水を飲ませろと言っていたな」
ガイアスは思い出したように吸い飲みを手に、カルデアの上半身を片手で抱き起こした。
そして、その口内に水を流し込む。
「ゴホッ、ゴホ……ッ……」
「なっ、しっかり飲め!」
しかし、カルデアは意識がないせいか、咳き込んだ。
ガイアスは慌てて傾けていた吸い飲みを戻し、戸惑う。
(このままでは、カルデアは水を飲めず、最悪死んでしまうのではないか……?)
そう思ったら、ガイアスはとてつもない恐怖感に襲われた。
この美しい者の命を、失わせてはいけないと思う一心で、ガイアスは咄嗟に吸い飲みの水を口に含む。