渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
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イナダール国を出航してから一週間が経った。
カルデアはガイアスの船に乗せられて、海に囲まれた南の大国ナディアへと向かっている。
(ナディア国までもう近いのかしら、心無しか日差しが刺すように痛い気がするわ)
船縁の手をかけて、カルデアはどこまでも広がっている、広大な海を飽きずに見つめている。
雪国出身のカルデアにとって、体の内側から沸騰しそうなこの暑さも、海も、初めて目に映すモノ、感じるもので溢れかえっていた。
「まるで、旅にでも出たみたい……」
「カルデア、何も羽織らずに船縁に立つなと言っただろう。また肌を痛めたいのか?」
突然声をかけられて、カルデアが振り返ると、ガイアスが呆れたように近寄ってきた。
ガイアスが呆れる理由もわかる。
船に乗ったばかりの頃、カルデアは初めて熱射病というものになった。
二日は熱にうなされて眠り続け、雪のように白い肌も火傷のように焼けてしまっていたほどだ。
「甲板へ出る時は、被衣を必ず羽織れ」
「申し訳ありません、ガイアス様」
「で、お前はまた、海を見ていたのか?出航してもう一週間だぞ、よく飽きないな」
ガイアスはカルデアに被衣を頭から被せて、隣に並ぶと、同じように海の水平線へと視線を向けた。