渇愛の契り~絶対王と囚われの花嫁~
「とりあえず、着いたらナディア国を知ってもらうためにも、大陸一周旅行だな!」
「無茶言わないでください、大陸一周していたら、政務に差し支えますよ」
「シュド……」
ガイアスは、げんなりとしながら、褐色の肌に漆黒の髪と瞳を持つ男、シュドを振り返った。
年齢はガイアスの二つ年上の二十七歳で、元奴隷出身だった過去を持つ。
昔は貴族に依頼された暗殺などを行っていたが、シュドの雇い主である貴族を摘発した国王ガイアスによってその力量を買われ、今や国王の側近にまで上り詰めた。
「シュド、お前は一言目には政務、二言目にも政務だな。お前の頭は、俺に仕事をさせる事しかないのか?」
「それが、私の仕事ですからね」
「面白くない答えだ」
「私に面白さを求められても、返す義理はありませんよ」
腹黒で、国王にも物怖じせず意見を言うお目付け役だが、ガイアスは気に入っていた。
ガイアスは国王という立場上、敬われ、跪かれ、大体の人間には肯定の言葉しかかけられない。
そんな中で、ガイアスに意見してくれる存在というのは貴重だった。