私は対象外のはずですが?~エリート同僚の甘い接近戦~
ここより壁一枚隔てた向こう側が一課だ。廊下に出て、隣の一課のドアを開け中に入る。すぐ近くの席に座っていた男性社員に一応声をかけて使用許可をもらうと、コピー機のある壁際に向かう。
原稿と枚数をセットして、スタートボタンを押し、振り返ってぐるりと辺りを見渡すと、ここも半数以上の社員が退社していて、残っている人数はまばらだった。
お腹空いたな……。今日は何食べよう。
金曜日だからといって、彼氏もいないし予定もない。時々、真由とご飯を食べに行ったりするけど、彼女は今日デートだと言っていた。
駅前のスーパーで値下がりしたお惣菜でも買って帰ろうかな、とぼんやり考えていた時、誰かの「主任、お疲れさまです」という声が耳に届いた。何気なく声の方へ振り返ると、「お疲れさま」と答えながら、フロアの入り口付近から奥のデスクの方へ進む宮坂主任の姿があった。
「あれ、本社に行って直帰じゃなかったんですか?」
近くの社員が仕事の手を止めて、宮坂主任に声をかける。
「そのつもりだったけど、こないだの新規の取引先から急遽電話があって。ついでに確認したいことがあったから」
端的に答えながら、主任は椅子の背もたれに脱いだスーツの上着を無造作に置き、パソコンの電源を入れた。椅子に座りながらワイシャツの袖をまくり、片手でネクタイを少し緩めている。営業所内はエアコンが効いていて快適だけど、夏真っ盛りの外は例え夕刻であっても嫌になるような蒸し暑さが続く。
二十五階の本社ビルはここから電車で三十分ほどの所だ。有名企業や一部上場企業のビルが立ち並ぶ場所にあり、私は入社式と二週間の研修期間の時に行ったきりだった。
確認事項なら、電話でも出来るのに。あ、担当事務の子、帰っちゃったとか? それで戻ってきたのかな。
原稿と枚数をセットして、スタートボタンを押し、振り返ってぐるりと辺りを見渡すと、ここも半数以上の社員が退社していて、残っている人数はまばらだった。
お腹空いたな……。今日は何食べよう。
金曜日だからといって、彼氏もいないし予定もない。時々、真由とご飯を食べに行ったりするけど、彼女は今日デートだと言っていた。
駅前のスーパーで値下がりしたお惣菜でも買って帰ろうかな、とぼんやり考えていた時、誰かの「主任、お疲れさまです」という声が耳に届いた。何気なく声の方へ振り返ると、「お疲れさま」と答えながら、フロアの入り口付近から奥のデスクの方へ進む宮坂主任の姿があった。
「あれ、本社に行って直帰じゃなかったんですか?」
近くの社員が仕事の手を止めて、宮坂主任に声をかける。
「そのつもりだったけど、こないだの新規の取引先から急遽電話があって。ついでに確認したいことがあったから」
端的に答えながら、主任は椅子の背もたれに脱いだスーツの上着を無造作に置き、パソコンの電源を入れた。椅子に座りながらワイシャツの袖をまくり、片手でネクタイを少し緩めている。営業所内はエアコンが効いていて快適だけど、夏真っ盛りの外は例え夕刻であっても嫌になるような蒸し暑さが続く。
二十五階の本社ビルはここから電車で三十分ほどの所だ。有名企業や一部上場企業のビルが立ち並ぶ場所にあり、私は入社式と二週間の研修期間の時に行ったきりだった。
確認事項なら、電話でも出来るのに。あ、担当事務の子、帰っちゃったとか? それで戻ってきたのかな。