私は対象外のはずですが?~エリート同僚の甘い接近戦~
返答に戸惑う私を他所に、真由は言葉を続ける。

「主任ってさ、穏やかに笑うことはあっても、それは何て言うか誰にでも向ける一定な表情って感じなんだけど、それとは明らかに違うよ。多分本人も無意識なんじゃないかな、あれは。一瞬だから他にも気づいてる人いるかわからないけど」

「……ごめん、真由の言ってることがわからないんだけど。もしかして、視力悪くなったんじゃない?」

「何、それ。詩織も私と同じこと感じてると思ったんだけど?」

「違うよ、全然!」

私が握っていた手をパッと離すと、真由は怪訝そうに私をじっと見つめてくる。

「……さっき、負けないから、とか言ってたけど、主任とトラブルでもあったの? さあ、もう白状しなさいよ」

真由の声のトーンが少し低くなる。こうなると、彼女は一歩も引かない。

「そんな大げさなことじゃないよ。私が迂闊だっただけで……」

私は再び歩き出しながら、先週金曜日の定時後のことを大まかに説明した。真由は聞き終わると、「びっくりだわ」と、まず一言感想をもらした。

「私もびっくりしたよ。まさか、あんな格好で主任に会うなんて……」

「それはただ単に詩織が手抜きしただけでしょ」

私の言葉を遮るように、真由がピシャリと言い放つ。

「そこじゃなくて、私は主任の言動に驚いてるの。会社を出たらあまり人付き合いをしようとしないことで有名な人が食事に誘ってきたんだよ? 他人に興味のない変人じゃなかったんだね」

真由の目に主任はそんな風に映ってたのか……。

「それは、私のお腹が鳴ったから可哀想に思っただけだよ」

主任をフォローしたいわけじゃないけど、その時の状況から思ったことを私は口にした。



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