私は対象外のはずですが?~エリート同僚の甘い接近戦~
一課の宮坂主任、とは。

社内では、かなりの有名人だ。

宮坂透也(みやさか とうや)、二十九歳、独身。アメリカから三年間の海外赴任を経て、昨年、この東京支社に一課の主任として戻ってきた。海外での実績を高く評価されている上、営業成績もトップで、次の人事では本社へ異動、さらには昇進確実では、と言われている期待のエリート。知的そうでキリっとした端正な顔立ちに、柔らかな印象を与えるダークブラウンの髪。スーツ映えするスラリとした体躯で、身長はたぶん百八十センチは越えてそう。

うちの会社に限ってのことじゃないけど、独身で仕事が出来るイケメンは、女子社員の憧れの的だ。ちょうど私達の入社と入れ換わるように海外に行ったので、昨年、同期や後輩の女の子達は、初めて見るエリートイケメンに、こぞって釘付けになり、職場は一気に色めき立ったものだ。

私の横に座る可愛い女子もその内のひとり。

「宮坂主任、途中で降りちゃったんですけど、私が【開】のボタンを押したら、降り際に、ありがとう、って言ってくれたんです……それだけで、午前中の疲れが飛びました!」

新山さんが目をキラキラ輝かせて、微笑む。

「……それだけで? ふーん……」

と、先に気の抜けたような相槌を打ったのは、真由だった。そのまま、興味無さげに、ランチのオムライスを頬張る。それもそのはず、真由は入社当時から経理課の年上の男性社員と付き合っていて、今でも彼一筋なのだ。そういう、ミーハーじゃないところも、私が真由を好きな理由のひとつだ。

「ふーん、って……泉さんは宮坂主任と同じ課だから、いつも見慣れてて何も感じないかもしれないですけど、違う課の私達には目の保養、心の栄養なんですよー。ね、木谷さん」

新山さんはふわりと軽い髪を揺らして、私の方を向く。

「え……?」

突然同意を求められ、私は空気の流れでつい、「う、うん……」と咄嗟に作り笑いで答えた。真由ほどではないけど、私もそんなに宮坂主任に対して心ときめいたりしていない。ある理由から、それは、彼にだけじゃなくて、社内の男性全員に対してなんだけど……。

「見てるだけなの? そんなに気になるなら、声掛けてみればいいのに」

真由の言葉に、新山さんが慌てたように首を横に振る。


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