私は対象外のはずですが?~エリート同僚の甘い接近戦~
「む、無理ですよ……宮坂主任って、爽やかで人当たりもいいんですけど、時々、近寄りがたい雰囲気出てるし……」

「あー、それそれ、なんとなく分かる」

真由が相槌を打ち、新山さんの意見に同感の私も頷く。宮坂主任は、仕事振りと人柄で、間違いなく周りから慕われてるんだけど、あまり自分から会社の人と関わらないような節がある。部署の飲み会も、歓迎会の時以来、ほとんど参加していない、って聞くし、社外では周囲と一線を画するみたいなところがあって、そういう性格の人なのかな、と思って私は特に気にしたことはなかったんだけど。

でも、逆にプライベートが気になる、とかで、なぜかさらに女性受けが良くなったりしてるから、イケメンは得だ。

「私なんか相手にされませんって……」
「そう? 新山さん可愛いから、男性なら誰でも嬉しいと、思うけど」

真由の発言に、新山さんは一瞬、ポッと頬を赤らめたけど、すぐに真顔になった。

「私、子供っぽいし相手にされないことは分かってるので、主任とどうこうなりたいわけじゃないですから。課が違うから、そもそも私、主任に認識されてるかどうかも分からないですし、恐れ多いから、遠くから眺めるだけにしておきます。それに主任はきっと……」

新山さんはそこで言葉を区切ると、今度は私の方に首を動かして、真剣な眼差しを向けてきた。

「木谷さんみたいなタイプの女性が好きなんだと思います……!」

「えっ!?」

唐突に突拍子もないことを言われ、持っていた箸が手から滑り落ちる。わわわっ、と慌てて両手でキャッチし、何とか床に落とさずにすんだ。……危なかった。

で、いきなり何を言い出すんだ、新山さん……!

「何でそう思うの?」

私の気持ちを代弁するように、真由が尋ねる。

「だって、同期の子が噂してたんです。以前、主任にどんな女性がタイプか聞いた人がいて、落ち着いてて余裕があって、誰も見てない所でもキレイにしてて、女子力高めの人がいい、って言ってたって……それって」

「いや、ちょっと待って……」

「木谷さんにピッタリのイメージですよね!」

私の言葉を遮り、新山さんは表情を輝かせている。

違いますよ、新山さん。あなたは今、とんでもない妄想に取りつかれてるだけなんですよ。

私はチラッと、真由の方に視線を向けた。真由は、プププ、と笑いを噛み殺したように必死に口元を歪めている。会社の人間で『素』の私を知っているのは、真由だけだ。きっと何かを思い出したんだな……コラ。

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