(完)嘘で溢れた恋に涙する
もう一度頭を深く下げた時、

「京子さんどうかしまし…
由姫!」


キッチンから顔をのぞかせたお母さんが悲鳴のような声を上げて走ってきた。


「ふん、あんたもだね。
親子揃って被害者気取りかい。
もう引っ越したくなかとなら、まずその目ばやめてくれんかな」


お母さんは私を横から抱きしめながら、念仏でも唱えるようにすみませんと言い続ける。


その目を見ると、涙で潤んでいた。


お母さんは必死にこらえている。


それが申し訳なくて仕方ない。



「ああ、気分の悪か。
さっさと夜ご飯の準備ばしてくれん」



おばさんは吐き捨てるようにそう言って奥の部屋に戻って行った。



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