熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
いつもだったら、優月の返事を聞いた後で、理由を問い詰めることも、無理に引き止めることもしなかった。
こんな私に、優月も戸惑ってるのがわかる。


「なんで、って。綾乃、もう九時過ぎてる」

「もう、って……! 私たち、恋人同士になったんだから。もうちょっとくらい一緒に過ごすのが、普通でしょ?」


思わずそう畳みかけると、優月は驚いたように目を丸くした。


「普通、って……。いったい何と比べて普通なんだ?」

「それは……」

「なんか変な入れ知恵でもされたか?」

「そうじゃない、けど」


なんだろう、この言葉も心も噛み合わない感覚。
それは優月も感じたのか、一度きゅっと唇を引き結んだ後、軽く前髪を掻き上げる仕草を見せた。


「あのなあ……。綾乃。恋人になることばかり、焦る必要ないんだぞ」

「焦る……?」


私は戸惑いながら聞き返した。


今朝、確かに、私は優月との速度の違いや温度差を感じたばかりだ。
優月を恋人として意識し始めただけで、感覚にも変化が出る。
それに戸惑い尻込みしながらも、恋人同士になったからには慣れなきゃ、早く追いつかなきゃと思っていた。


優月は小さく何度か首を縦に振って、私に返事をした。


「今……俺に言ってくれたのも、『恋人だから誘うのが普通』だと思ったからだろ?」
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