熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
とは言え、パーティーで、優月は穂積グループの後継者として、傘下企業トップたちをアテンドする役割を担うことになっている。
準備は所轄部署の部員たちがしっかり進めているだろうけど、優月も少し早めに到着していた方がいい。


「二十分前には会場入りした方がいいと思います。でももう少し時間に余裕ありますから、紅茶、淹れましょうか?」


私がお仕事モードの口調で訊ねると、優月はスーツの上着の襟元をビシッと引っ張って直しながら、「いや」と答えた。
そして、チラリと私に目を向ける。
その視線が私を観察しているようで、私は腰が引けるのを感じながら首を傾げた。


「な、何……?」

「綾乃、いつもに比べて地味じゃないか?」

「えっ……? そ、そうですか……?」


優月の指摘に怯みながら、私は自分の服を見下ろして確認した。


総合受付の応援に行くこともあるから、清楚にかっちりを意識して、丸いレースの衿がついた紺色の膝丈ワンピースを着ていた。
ちょっと大人っぽく見せたくて、いつもは履かない八センチのハイヒール。


パーティー用に華やかさも出そうとして、髪はハーフアップでシニヨンに纏めた。
肩下まで下りた毛先も、ほんのちょっと巻いたりしてみた。


全体的に大人しめだけど、いつもと比べてもそれほど地味ではないはず。
そう自己評価をする私に、優月はクスッと笑った。
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