熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
説明のつかない感覚にじりじりして、私は無意識に喉元を飾るペンダントに手をやった。
指先でなぞって感触を確かめてから、ギュッと手の平に握り締めた、その時。


「アヤノ」


憚るように低めた声で名前を呼ばれ、私はビクッと肩を強張らせた。
足元に敷き詰められた人工芝を、サクッと踏み締める足音が近付いてくる。


どこかたどたどしい足取り。
彼女は十センチはあるピンヒールを履いていたから、きっと歩き辛いんだろう。


「ユヅキを放ったらかしにして、いいの? アヤノ」


次の声は最初のものより近くから聞こえた。
クスクスとからかうような笑い声が続く。
その言葉が、今のこの状況だけを指して言われたわけじゃないことは、感じられる。


思わず勢いよく振り返ってしまった。
私の背後すぐそばまで来ていたマリーさんが、ちょっと驚いたように目を丸くして、その場で一度ピタッと足を止めた。
けれど私の強張った顔を見て、再び面白そうに笑いながら踏み出してくる。


「ユヅキが探してたわよ。ただの秘書相手に、心配し過ぎよね。さすがにユヅキが場を空けるわけにいかないから、私が代わりに来てあげたけど」

「す、すみません。すぐ戻ります」
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