熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
隣に並んで足を止めたマリーさんに、私は反射的に頭を下げてそう言った。
彼女と入れ替わるように展望台の出入口に向かおうとして、後ろ手を取られてしまう。


「待ちなさい。アヤノ」


続いてそう言われては、私も足を止めざるを得ない。


「私の質問の返事、してほしいわね」

「質問?」


怪訝な気持ちが顔に出てしまったようだ。
マリーさんは「そう」と、ちょっと意地悪に微笑んだ。
その笑顔で、やっぱりそういうニュアンスを含ませていたことがわかる。
私は彼女から逃げ出すのを諦めて、肩を竦めて再び柵に腕を乗せた。


「婚約は解消したけど、関係が終わったわけじゃありません」


さっきは私も優月も説明を濁したけど、今はパーティー会場にいるわけじゃないから、私はきっぱりとそう言った。
それでも声を潜めたのは、疎らとは言え、展望台に人がいないわけではないからだ。


私の日本語が曖昧過ぎて意味が伝わらなかったのか、マリーさんは不審げに眉をひそめる。
「What?」と先を促されて、私は向かい側のビルの窓を見つめながら口を開いた。


「ちゃんと、恋から始めたんです。私と優月」


横顔にマリーさんの視線を感じながら、私は意識的に声のトーンを落としてそう言った。
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