熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「以前から、パーティーで見かける度に腹が立ったわ。ホヅミの後継者ともあろう男に、いつまで子供のお守りさせるつもり? アヤノ」

「は、離してください!」


思わず首をの後ろに手を遣りながら、私は声を張り上げていた。
ペンダントにかかるマリーさんの手を振り解こうとして、その手を逆に掴み上げられてしまう。


「ユヅキの手を煩わせてないで、大人しく結婚しておけばいいのよ、あなたは」

「え?」


大きく顔を覗き込まれ、私は顎を引いて逃げながら聞き返した。
今マリーさんの口から聞くと、『結婚』という幸せなはずの言葉が、とても無意味なものに聞こえてしまう。


心に広がる不快な感情が、顔にも思いっ切り表れてしまったようだ。
私の歪む顔を見て、マリーさんの方はとっても愉快気に肩を揺らす。


「だって、ユヅキの妻は、あなたのような『人形』でも十分なの」

「に、人形……?」

「従順でさえあれば。『女』は他で求めれば済むんだから」

「っ……」

「でもまあ、その婚約すら解消したって言うなら。……もうユヅキは私に任せときなさい、アヤノ」


私だけじゃなく、優月のことも蔑む言葉に聞こえた。
心臓がドクンと大きく拍動したかと思うと、一気に全身に血が巡っていく。
耳のすぐそばで、脈動の音を感じる。
気付いたら、一瞬にして頭に血が上っていた。
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