熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「ふざけないで……離してください!!」


お腹の底から声を吐き出し、私は掴まれた腕を力いっぱい振り払った。
それだけじゃマリーさんの手は離れなくて、私はもう片方の空いた手を、無意識に振り回していた。


「キャッ……」


私の反撃をよけようとしたマリーさんが、大きく一歩後ろに足を引いた。
その途端、人工芝にピンヒールを履いた足を取られたのか、彼女はバランスを崩して大きく後ろによろけた。


「……あっ!!」


私は慌てて、一度振り解いた手を再び彼女に向かって伸ばした。
けれど間に合わず、マリーさんはその場にドスンと尻もちをついてしまっていた。


「いったあ……」

「ご、ごめんなさい、マリーさん! 大丈夫ですか!?」


しゃがみ込む私の目の前で、マリーさんが苦痛そうに眉を寄せ、足首を摩っている。
足を取られた時に強く捻ってしまったのか、ストッキングの上からでも、赤く腫れているのが確認できた。


「大変……」


怪我をさせてしまったことに焦って、一瞬目の前が真っ暗になる。
それでも辺りを大きく見渡すと、私たちの不穏なやり取りを遠巻きに見ていた数人の人影を見つけた。


「すみません! 手を……手を貸してください……!」


私はマリーさんの肩を支えながら、助けを求めて展望台に声を響かせていた。
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