熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
それには私も、しっかり顔を上げて返事をした。
優月は私の返事を聞くと、ゆっくりマリーさんに歩み寄っていく。
そして診察台の前で足を止めると、そのままヒョイッとマリーさんを両腕で抱え上げた。


「っ……」


優月が躊躇うことなくマリーさんを『お姫様抱っこ』する姿に、私は思わず息をのんだ。
同時に、胸がドクンと嫌な拍動を繰り出す。


後ろから見ている私と、彼の肩越しにこっちを見つめるマリーさんの視線が宙でぶつかった。
彼女はふふっと口角を上げて、優月の首に両腕を回し、抱きつくように掴まっている。


私は咄嗟に顔を背けた。
身体の脇で無意識に握り締めた拳が、カタカタと震えているのがわかる。


「綾乃。悪いけど、俺、このまま直帰する。マリーの荷物、後で届けるように手配してもらえるか?」


優月が医務室のドアに向かいながら、一度だけ足を止める。
小刻みに震える拳を、もう片方の手で押さえ込みながら、私はグッと歯を食い縛っていた。


「綾乃?」


私が返事をできずにいたからか、窺うような声が続いた。
そこに立ち止まったまま、彼が私を振り返っているのが、気配から感じられる。


「……はい」


顔を背けたまま、掠れた小さな声でそれだけ返事をするのが精一杯だった。
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