熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
涙を拭っただけの顔で、私は本社ビルから穂積家に直行した。
門の前で名前を告げて敷地内に通してもらい、真っすぐ本邸を目指す。
玄関先で出迎えてくれた顔見知りのお手伝いさんにマリーさんのことを訊ねると、彼女は私を一階の奥にある客室に案内してくれた。


「先ほど優月様もお通ししたところですので、ご在室かと思います」


廊下を歩きながら、まさに優月の所在についても聞こうと思っていたら、先回りするかのように教えてくれた。
おかげで、私は玄関からドアの前に立つまで、自分から質問することなく辿り着いてしまった。


彼女が一礼して、来たばかりの廊下を戻っていくのを見送ってから、私はジワジワと込み上げてくる緊張を抑えよる為に、一度大きく深呼吸をした。
長い息を吐き切ってから、右の拳をドアに打ち付けようとして。


「ちょっとユヅキ」


中から聞こえてきた声に、一瞬ピタッと手を止める。


「ユヅキの部屋は別邸にあるって、どうして先に教えてくれないのよ」


更に続く不満気な英語。
私はその場で固まったまま、ゴクッと喉を鳴らした。


「それなら私の部屋もそっちにしてほしいわ」


ふて腐れたような声に、優月の返事が被せられる。
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