熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「見たことないくらい優しくて、慈しんで愛おしんで……。『子供』に向ける目じゃないのに、二人の間に男女の関係はないなんて、意味がわからなかった。ユヅキとアヤノから、私には敵わない絆みたいな物を感じ始めた頃、ユヅキから『これで終わりだ』って言われたわ」

「……絆、ですか?」


マリーさんの震える拳に視線を落としながら、私は彼女の言葉の中からそう繰り返していた。
マリーさんは「そう」と言って、ハッと浅い息を吐く。


「ユヅキと、私や他の女と関係は、ただのアバンチュールよ。一緒に過ごす短い時間は熱く甘いけれど、終わった瞬間には儚く消えていく。『たった一度』を繰り返せるだけで楽しかったわ」


その時間を思い出しているのか、マリーさんはほんのわずかにふふっと笑った。
けれど、顔にかかった長い髪を掻き上げた彼女は、笑みを引っ込めて唇を噛んでいた。


「だけど……アヤノは違う。あなたは女を武器にユヅキを繋ぎ止める必要なんかないのよ。気負わず自然体のままで、ユヅキに大事に愛してもらえる。羨まし過ぎて、憎いと思ってたわ」


少しずつ早口になっていくから、マリーさんの感情が昂り始めていることを感じた。
それを必死に抑えようとしてるのか、彼女の拳により一層力がこもるのも見て取れる。
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