熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
持参していたトートバッグから、タオルハンカチを取り出して差し出す。


「サ、サンキュ、綾乃ちゃ……って……」


受け取ったハンカチで口元を押さえながら、進藤さんは涙を滲ませた目を私に向けてきた。


「君、いったい優月に何をした……じゃなくて、させたの!?」


ようやく噎せ込みが治まった進藤さんが、大きく目を剥いて身を乗り出してきた。
私は反射的に背を引いて逃げながら、ひょこっと首を縮込めた。


「ベッドに、押し倒させてみたんです。前に進藤さんが言ってたから」

「大人しい顔して結構すごいことするね、綾乃ちゃん。……で?」


そう言う割に、進藤さんも興味津々の様子で、私に畳みかけてくる。


「思った以上に普通の顔してました。もちろん、驚いた様子ではあったけど」


私が素っ気なく答えると、進藤さんは何度かパチパチと瞬きしてから、自分の椅子のシートに背を戻していく。


「……優月、気の毒に」

「え?」


口元にハンカチを当てたままで、進藤さんは呟いた。
その声はくぐもって聞き取り辛く、私は首を傾げて訊ね返した。


進藤さんは、「いや」と言って自分の発した言葉を打ち消す。
そして、手元にある私のハンカチにそっと視線を落とした。
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