熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「綾乃ちゃんから振ったくせにな~。優月が平気そうじゃ面白くない?」

「そ、そうじゃないです」


茶化すように言われて、私も自分で『図々しい』と反省しながら肩を竦めた。
けれど、やっぱり私は表情を曇らせる。


「でも……許嫁って存在がいきなり無になったのは、優月だって私と一緒のはずなのに。いつも通りに平然とされちゃうと……一応機嫌悪くなって渋ってくれたのも、世間体とか建前だけで。やっぱり優月も、私じゃダメだったんだろうなあって」


自分でも何を言ってるんだろうと思いながら、私はもそもそとご飯を口に運んだ。


「ダメって?」


進藤さんは男っぽく豪快に食べ進めながら、私に言葉の先を促してくる。


「……試してみたんです。優月、どんな顔するだろうと思って」


私は口の中のご飯をゴクンと飲み下してから、ボソッと呟いた。
進藤さんは水の入ったグラスを手に、『顔?』と首を傾げている。


「欲情した優月の顔、見てみたくて」


私はテーブルに両肘をのせ、顔の前で両手の指を組み合わせて、目を伏せながら言った。


「……!?」


私の目の前で水を飲んでいた進藤さんが、ギョッとしたように大きく目を丸くして、次の瞬間、激しく噎せ返った。


「うぐっ、ごほっ……」

「あ、大丈夫ですか!?」


ドンドンと胸を叩く進藤さんに、私は慌てて腰を浮かせた。
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