熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
ほんのちょっとホッとしながらその背を見送って、私はマリーさんに目線を向ける。


「ありがとうございました。マリーさん」

「あのくらい上手く断れる英語力、早く身につけなさい」


間髪入れずに向けられるソフトな皮肉は、彼女なりのエールだと知っている。
私はふふっと微笑んだ。


ここは、マリーさんが勤務するホヅミ・インターナショナルUSAの本社。
あの騒動の真っただ中で帰国したマリーさんの取り計らいで、私はそれから二週間経った頃、ここ、アメリカ・ロサンゼルスにやって来た。


表向きは『語学研修プログラム』に乗った形で、派遣期間は一年。
記事にされたマリーさん本人からの申し出だったから、私に向けられる非難への緩衝材にもなると判断された。
『派遣期間を終えて日本に戻る頃には、社内外も落ち着くだろう』という周りの提言を汲んで、優月も渋々ながら私の異動にゴーサインを出したのだ。


二十五歳にして、実家を離れて一人暮らしは初めて。しかも海外。
私以上に不安げだった優月に心配をかけたくなくて、私は最後まで笑顔で明るく手を振ってきた。


渡航するまで不安ばかりだったけど、マリーさんやスティーブさんがいるオフィスだ。
日本での騒動の責任を感じているのか、二人ともオフィス以外でもとても良くしてくれる。
正直なところ、ロスでの生活は思ったほど悪くない。
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